2023 兎年のライクランク

(ギリギリ大晦日に間に合わなかったので、土下座しながら書きました。)

去りゆく年の寂しさを紛らわすように今年あった出来事を噛み締めている。
あとあと振り返って印象に残るのは、触れたものや食べたものばかりなのでその良さが薄れないように今年もちゃんと残しておこうと思う。

ちなみに、今年も魂のおすすめです。

 

 

映画

ひとつに選ぶことは愚かなので例によって大量です。
今年もたくさんの映画を劇場で観ました。日比谷への定期券がほしい。

・イニシェリン島の精霊

おじさん2人が本気で喧嘩をするだけの映画。
ただ、喧嘩のスケールが全然違う。人の尊厳を奪い合うやりとりを年初から観れてとてもウキウキした。暗い映画です。

・BLUE GIANT

今年いちばん心が震えた映画かもしれん。
原作も読んでいるのでストーリーはわかるし、その原作とは異なる展開や、唐突な3DCGも飲み込みづらいが、それでも青い衝撃を耳で感じられることが嬉しかった。

 

・まーごめ180キロ

今年観たドキュメンタリーの中でいちばん激しい人間ドラマだった。主に体のデカさに衝撃を受ける。
ママタルトを知らない人間からすると、冒頭のまーごめの説明は意味不明で笑えるが映画を観終わったあとは(作中で説明はロクにないのに)なぜかまーごめの意味がわかるようになったのが怖かった。

 

・怪物

これはもう文句ないでしょ。ありそうでなさそうな設定なのに、演技が巧みな人たちが集まっているせいでまるで近所の話のような親近感が湧いてきて怖かった。スクリーンに映るすべてが怪物で、観ている僕らも怪物にだった。

 

・TAR

ケイトブランシェットはキャロルとかオーシャンズ8くらいから顔と名前が一致したのだけど、TARを観てからはしばらくケイトブランシェットのことしか考えられないくらい夢中になってしまった。
かっこいい女の人が狂っていく様だったのかと観終わってから気づく映画。振り返るな。

 

・君たちはどう生きるか

公開2日目に日比谷のIMAXシアターに観に行ったのだけど、終盤にスクリーン下半分が赤黒くなって、画面は動いているものの絵がほとんど観えなくなった。
シアターは満員だったのだが、そのまま5分くらい誰も動かず半分赤い画面を眺める時間が流れる。

「え、『君たちはどう生きるか』ってこういうこと?」

俺はこの状況に対して、お前はどうたち振る舞うのかという宮崎駿が仕込んだ仕掛けなのかと思い、慌てて劇場スタッフを呼びにシアターを走った。

当然だが結果はただの機材トラブルであって、宮崎駿もこんなことは望んでいない。

普段モニタリングとか一般人のドッキリ番組ばかりを観ているので、こういう時にヒーローになることばかり考えて生きてきた成果がついに発揮された。
その後トラブルが起きた少し前から再上映が始まって無事終了したのだが、エンドロールに上演に貢献した俺の名前が入っていないか期待してしまった。俺は一生こうやって生きるのだろう。観ているか宮崎駿、俺はこう生きるぞ。

あ、映画自体もかなりよかった。これが本当のジブリ祭りだろって感じ。

 

・あしたの少女

年に数回見る「ただずっと状況だけが悪くなっていく映画」。
あしたの少女、というタイトルと内容のしんどさが相関していてつらい。でもかなしいさの中に綺麗なものが輝いててそれを観れてよかったと思う。

 

・北極百貨店のコンシェルジュさん

西村ツチカファンとしては感動もののクオリティだった。原作がそのまま動いている!ではなく、音楽や演出であの作品の良さを何倍も膨らます映画だった。ほんわかお仕事ムービーに見えがちだが、その実かなりこだわった自然環境に対する配慮も伺えて本当によかった。

 

・正欲

誰が出るかも知らない状態で観始めたので冒頭30分はなんのこっちゃで退屈だな〜と思っていたらもう!あ〜〜〜〜〜〜って感じで終わる。キャッチにあった「観る前には戻れない」へ見事に堕ちた。俺はただフラットに生きていくぞ。
生活はしょうがないことばかりだし、悪い奴はいるけれど、それでも生きていこうとすることは奇跡そのもので全ての命が尊い理由なのだと思う。

 

・PERFECT DAYS

音がある生活がいいなと思う。歩く音とか自分が触るものに、小さな音が鳴ってそれが耳に届く、静寂が味方につくと人の生活は綺麗に感じられるのだろうと思わされた。
役所広司が自然と生きている様子を観て、生きていく場所なんかよりも今いる場所でどう生きるかのほうが重要なのだと思う(宮崎駿、俺もそう生きるぞ)。

 

 

ライブ・演劇

年明けを幕張メッセのカウントダウンライブで迎えた今年はライブやイベントにも多く参加した。
いくつか心に残っているものを明記しておこう。

 

・下北沢トリウッド ヨーロッパ企画 時間映画特集 上田誠フェス

上半期の振り返りでも書いたやつ。

推しと直接話すことへの畏れを初めて抱いた。
会いたい人には会いにいくタイプだが、会いたい人を目の前にすると緊張で何も話せない(話したくない)。
間近で推しが話しているのを観る方がよっぽどいいのかもしれない。

 

・“Syn : 身体感覚の新たな地平” by Rhizomatiks × ELEVENPLAY

Syn:身体感覚の新たな地平 by Rhizomatiks x ELEVENPLAY
観客と演者が共に巡るダンスの旅。感覚の深化と存在を再構築する未踏のエクスペリエンス。この秋、世界に先駆けて虎ノ門ヒルズで初公開。

虎ノ門ヒルズに新たにできたステーションタワー45FにあるTOKYO NODE開業記念に約1ヶ月にわたって行われていた没入型のビジュアルとダンスによるパフォーマンスである。マジで何言ってんのか自分でもわからん。

いわゆるイマーシブシアターと呼ばれるもので、ステージもなければ観客席もない劇場を演者も観客も自由に動き回って体験する公演なのだ。何言ってんのかまだわかりません。

サイトにはこんな説明書きがあった。

地上45階、天高最高15m、総面積約1500平米ものTOKYO NODEの巨大展示空間の精巧な舞台美術の世界に、体験者自ら足を踏み入れ、それぞれの物語を選択していく本作は、インスタレーションでもあり、ダンスパフォーマンスでもあります。体験者は観客でもあり、参加者でもあり、目撃者にもなるのです。
感覚の深化と存在を再構築する未踏のエクスペリエンスを、この秋、世界に先駆けて虎ノ門ヒルズで初公開。

「感覚の深化と存在を再構築する未踏のエクスペリエンス」のわけわかんなさがすごい。

 

ここまでずっと管巻いているが、パフォーマンスはかなり刺激的だった。

イマーシブシアター自体初体験だったので物珍しい部分も多いが、好きだったイレブンプレイのダンスを間近も間近、目の前でたのしみながら自分も舞台装置の1つになって、現象を体験できることの贅沢さがあった。
これ以上なにか書こうとするとどうしても斜に構えてしまうので、この辺でやめておく。

 

・『さみしい夜にはペンを持て』刊行記念「日記の目と耳をもって生きること」古賀史健×古賀及子トークセッション
比較的最近に行われたトークイベント。
古賀史健さんは嫌われる勇気を始め、ライターの神様にみたいな方。古賀及子さんはおなじみDPZの編集兼ライターの方である。どちらも天上人に違いないが、この日は青山まで降りてこられていた。ありがたい。

お二人とも日記にまつわる著作を出されているので、この日のイベントは「人はなぜ日記を書くのか(書くべきなのか)」「日記への向き合い方」「日記を書くにあたって考えていること」などとにかく日記の書き方に関する話だった。

日々の記録を賛美することは、人生を賛美することで、そのための道具であり方法としての日記を作られるように思う。
このイベントを境に日記を再び始める気運が高まっている。

 

・ヨーロッパ企画第42回公演『切り裂かないけど攫いはするジャック』

切り裂かないけど攫いはするジャック | ヨーロッパ企画
▼【動画配信】ヨーロッパ企画第42回公演「切り裂かないけど攫いはするジャック」NEW! 2023年9月~11月に10都市で上演され、17,000人以上を動員した劇団25周年ツアーから、京都公演を収録した映像が年末年始に期間限定配信!チケット

・ヨーロッパ企画25周年ツアー『きっと、私UFOを見た。』

ヨーロッパ企画の結成25周年記念、南座で特別興行「きっと、私UFOを見た。」
ヨーロッパ企画の結成25周年を記念した特別興行「きっと、私UFOを見た。」が、11月21日に京都・南座で行われる。

今年も観たよヨーロッパ企画公演。
今年は25周年だったこともあって露出多めだったヨーロッパ企画。
リバーから始まって、ジャック、UFO、あとはトキコイも全部観た。ヨーロッパ企画が好きすぎるだろ。
そんでもって全部おもしろいのがヤバすぎる。毎年ハズレがないコンテンツを作り続けることの異常さがようやっとわかってきた。普通に怖い。
特に夏にトリウッドで初演映像を観ていたから25周年のリバイバル?風の記念公演の有り難さを余計に感じた。
これからも永遠に続いてほしい。来年のイエティも行きます。
(ジャックはいま配信がはじまったよ!!)

 

・サンボマスター全員優勝ライブ in 横浜アリーナ

【ライブレポート】サンボマスター“全員優勝”デビュー20周年記念ライブが横浜アリーナで大盛況
■大阪城ホール、日本武道館でのワンマンライブ開催も発表! サンボマスターの約6年ぶり10作目となるニューアルバム『ラブ&ピース!マスターピース!』のリリースとデビュー20周年を記念して、11月19日、サンボマスターのワン

サンボマスターのライブは人生のガソリンだから……。
山口さんが話す言葉も、歌詞もメロディも、全部が会場にいる1人のために話をしているように思えて、終始涙が止まらなかった。
人は生きていていいのだけど、みんな自分のことで大変だから人に感謝や賛美をすることがないけれど、忖度なしの肯定のありがたさをサンボのライブでもらって、俺も誰かに花をあげたいと思うのだ。

 

 

漫画・小説

そこそこ読んでいるわりに蓄積がなくなってきたと感じる読書ジャンル。
経験が増しているからなのか、集中力が減っているからなのか。たぶん両方だ。
苦虫を噛み締めるように読む本ほど記憶に残り、生活の糧になっている気がする。

 

・違国日記 11巻 著:ヤマシタトモコ

s-book.net Library Service

今年はいろいろあったけど、確かに違国日記完結は大きな出来事の1つとしてカウントしている。
毎巻心の深いところに刺さるようなフレーズや展開があって、読むたびに深海にいるような没入感を覚えていた。
向こうが本気で来ているから、こちらも真摯に向き合いたい、そんな気持ちになる作品なんてこれからいくつ出会えるだろうか。

 

・風に舞いあがるビニールシート 著:森絵都

風に舞いあがるビニールシート
【直木賞(135(2006上半期))】【「TRC MARC」の商品解説】

小説もいくつか読んだが、久々に読んでて涙が出た。
2023年の世界情勢のバフがかかっていた気がしないでもないが、表題作の真に迫る感じがたまらない。
作品には関係がないが、文字を読んで出る涙がなんとなく1番尊い(想像力の賜物だから)気がするのはなんでだろう。

 

・喜嶋先生の静かな世界 著:森博嗣

『喜嶋先生の静かな世界 The Silent World of Dr.Kishima』(森 博嗣):講談社文庫 製品詳細 講談社BOOK倶楽部
文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のとき卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋、珠玉の喜嶋語録の数々。学問の深遠さと研究の純粋さを描いて、読む者に深く静かな感動を呼ぶ自伝的小説。 感動に包まれる自伝的小説 文字を読...

毎年森博嗣作品を1〜3冊読むことを人生のタスクにしつつある。森博嗣の刊行ペースを考えるとそれでも遅いのだ、一生追いつけない。
自伝的要素もありつつ、物語としての味をいい塩梅に残していておもしろ悲しいお話だった。小説読んでて「えっ!」って大声でしゃべったの子どもの頃以来でうれしかった。そういう小説。

 

 

食・飯

普通に2キロ太った1年だったので、飯の選定には自信がある。
太ったのは自堕落な生活をしたからではない。日々の食を全力で楽しんだからである。食を楽しむ人は生きようとしている人なので問答無用で偉いとされている。

 

・とくらのハンバーグ(京都)

年に2〜3回京都に行っている。今年も3回ほど行った。魂のふるさとだからだ。
あまりSNSのバズを頼りに行動をしないようにしているが、気まぐれでいったこのレストランのハンバーグだけは感動があった。

とにかく肉汁をみてくれ。百聞は肉汁にしかない。

どうだ。うまそうだろう。そうだ、これはとんでもなくうまい。

かかっているソースも選べるが明太マヨがうまい。全部うまい。思い出してつらいくらい美味い、勘弁してくれ。

 

・たこパティエ

たこパティエ.com
パティシエが作る、本格たこやきスイーツ。大阪伝統の味、たこやきを追求しました。ソース、青海苔、鰹節などたこやき本来の味にクルミやキャラメリゼを加え初めて食べる味を実現しました。

職場で大阪土産でもらったのだが、間違いなく今年食べたお菓子の中で1番うまかったと断言できる。俺の人生はたこパティエとの出会い以前と以後で別れてしまうほど、体に衝撃が走った。

味は関西そのものというほどソースの味わいなのだが、甘味がそれをスイーツに昇華してくれている。
サクッとしたパイ生地食感とたこ焼きで感じるしょっぱさが見事なハーモニーで口に広がって、後味に甘味がそれをまとめてくれる。
たこパティエはそんな調和をある食べ物なのだ。

お土産にもらってからどうしても食べたくて通販で30個入り×3つ買った。家にいつでもたこパティエがある生活は至上である。

 

 

そんなこんなでダラダラと自分の好きなだったものをまとめていたら年を越していた。

今年も自分の機嫌を取れるように適度にエンタメと距離を近づけて生きていきたい。

 

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