仕事に疲れた時は、大きな犬の写真を見ることにしている。
出典:Photo AC(写真素材:横から見たジャーマンシェパード)
健気な犬たちの姿を眺めていると、肩にのしかかった疲れがフワッと軽くなっていく気がするのだ。
いつのまにか定着していたこの習慣は、僕の疲れが増えてくるにしたがって徐々にこだわりを帯びていき、最近のブームは「警察に褒められている犬のニュースを見る」ことになりつつある。
最近だとこういったニュースがあった。
出典:Yahoo!ニュース(行方不明者を発見でお手柄! 警察犬レックス号に賞状と好物ジャーキー 佐伯署)
いわゆる「お手柄犬の表彰ニュース」である。
たまに夕方のワイドショーでも取り上げられ、政治報道や芸能ニュースの間に挟まって見事な癒しをもたらしてくれる。
上記のネットニュースによると、警察犬として活動しているレックスが行方不明とされていた高齢男性の移動経路をにおいから特定し、発見に大きく貢献したという。
驚きなのが人間が2時間かかっても見つけられなかった男性を、ものの15分で解決に導いたというのだから、レックスの優秀さはまごうことなく称賛に値するものだ。
こういったニュースを眺めていると、犬たちへのありがたみにただただ心が包まれる。
その称賛の気持ちは関係者一同共通だったのか、このレックスには犬用ジャーキーが贈呈され、表彰の場でも凛々しくお座りしている。かしこかわいい。
癒されれるなと思いつつ、1つ気になった。
レックスがもらった犬用ジャーキーってどれくらい美味しいんだろうか?
僕は生き物にとって別の生き物の命を救うことは、何にも変え難いほどの功績だと思っている。
そんな素晴らしいことした称賛としてもらった、ジャーキー、はたしてどれほど素晴らしいのか、大変気になる。
こういったニュースに対する見どころとして一体どうなんだという気持ちはありつつも、調査に踏み出すことにした。
お手柄犬のニュースぜんぶ見る
件のジャーキーを調べる前に、お手柄犬たちが他にもどういうものを贈呈されているのかを調べてみよう。
といってもコネクションなどはないので、ひたすらGoogleにて「警察 犬 表彰」で引っかかったニュースを片っ端から集める。
癒しのかたわら、作業的に記録し始めたが、1週間ほどで76件(犬)分集めることができた。
なぜそんなに中途半端な数字なのかというと、検索ページの最後まで行き着いてしまったからである。
Googleの検索ページの最後に辿りついたときのあの感動にも近い寂しさ、終わりがなかった山頂に辿り着いてしまったときの話もしたいが、本題はその中身である。
今回僕はお手柄犬ニュースをみて、「いつ・だれが(どの犬が)・なにをして・なにをもらったのか」をまとめた。
特に熱心に整理したのは、「なにをもらったのか」。副賞の存在である。
ニュース記事内で語られている情報に限られるが、こういったお手柄犬へはご褒美の副賞が贈られることが多い。
案外副賞のレパートリーも豊富で、犬の功績に応えようとする警察の方々の気遣いを感じた。
いったいどんな副賞があるのかを眺めていると、副賞にはそのお手柄犬の好物が与えることがある。
やはりプレゼントにもらって嬉しいのは、その犬が好きなものであるべきだ。
ご褒美というなら尚更である。
好物としてジャーキーを希望する犬が多いようだが、中にはさつまいもやりんごなんてものもみられた。
副賞の内容に注目すると、ほかにも様々なポイントが見えてくる。
ただ好きなものを贈るだけではなく、「たくさん与える」ことでその功績を讃えるケースがあるようなのだ。
例えば、
・ビーフジャーキーを1年分
出典:QAB NEWS (事件解決に貢献 警察犬表彰式「ビーフジャーキー」1年分贈呈)・ドッグフード6.5kg
出典:読売新聞オンライン(行方不明の女性発見、警察犬を表彰…副賞はドッグフード6・5キロ)・高級ジャーキー100日分
出典:テレ朝news(強盗犯の足跡たどり自宅特定 警察犬のお手柄で犯人逮捕 ご褒美はジャーキー100日分)・サツマイモ10kg
出典:日テレNEWS(5度目の表彰!不明男性を発見した警察犬に表彰状)
などの例があった。
サツマイモ10kgはかなり特殊なケースに思えるが、たまたま?別の県でも同じようにサツマイモ10kgが贈られたニュース(日テレNEWS)があり、つい、20kgのサツマイモに想いを馳せてしまった。
さらに副賞はなにも食べ物に限ったものだけではない。
おもちゃの人形をもらったり(埼玉新聞)、
ブラッシングが好きな子のためにブラッシングブラシが贈られたり(TBS NEWS DIG)、
暑いときの任務用に冷却タオルが贈られることもあった(NHK 首都圏 NEWS WEB)。
がんばった犬を精一杯喜ばせたい、褒めてあげたい、そんな周囲の人たちの優しい感謝の気持ちを副賞のラインナップから知ることができた。
ちなみに、こういったお手柄犬のニュースの大半は「行方不明者の捜索」が多いことも意外だ。
稀に自殺者の防止や窃盗犯の確保など、直接事件に関わることもあるが、我々の見えないところで犬たちが頑張ってくれていることを思うと、胸が熱くなった。
さて、話をジャーキーに戻そう。
特に高級ビーフジャーキーが気になる
改めて副賞で渡されているものをみると、やはりビーフジャーキーの存在は目立つ。ご褒美の代名詞だ。
さらにそんな副賞たちの中でとりわけ輝いているのが「高級ビーフジャーキー」である。
僕が調べたものの中でも3件、あえて「高級」と銘打たれている。
・強盗犯の足跡たどり自宅特定 警察犬のお手柄で犯人逮捕 ご褒美はジャーキー100日分
出典:テレ朝news・山菜採りの高齢者が行方不明、警察犬が出動30分で発見…ご褒美は高級ジャーキー
出典:読売新聞オンライン・水路に転落ほえて知らせる 人命救助の犬と飼い主表彰 筑前町|NHK 福岡のニュース
出典:NHK福岡ニュース
立派な功績に対して、しっかりと一級の品を与えるのはフェアだと思うし、犬たちにとってもやる気になるだろう。
果たしてここで渡されている高級ビーフジャーキー、どれほどのものなのだろうか。
気になったので日本警察犬教会に問い合わせみたところ、忙しいにも関わらず、きちんとお返事をくれた。
とのこと。
副賞品については各警察署で決めているためわかりかねる、という回答だった。
(ご回答いただきまして、ありがとうございました!)
ならば各警察署に聞いてみるか!?と思ったものの、さすがに僕の興味のために更に公務員の方々のおそ手を煩わせてしまうのも忍びない。
なので再度インターネットで調査してみたところ、いくつか犬用のお高めジャーキーを見つけることができた。
・https://www.doggarage.jp/SHOP/4582474930619.html
実際にこれが犬たちに渡されたかどうかはわからないが、一級品であることには間違いない。
これを僕が食べてみるのも一興、かと思ったのだが、高級ビーフジャーキーのページを読めば読むほど、それがどれだけ丁寧に作られているか想像してしまう。
僕の一興のために誰かの頑張りを失わせてはいけない。
そんな理性が働いた結果、Amazonでなとりのビーフジャーキーを大量購入してしまった。
お待たせしました。
僕のための高級ビーフジャーキー、はじまります。
一度は食べてみたかった高級ビーフジャーキー
スーパーのおつまみコーナーの一角で黄金に輝いている、なとりの一度は食べていただきたいシリーズをご存じだろうか。
結局いつも安価なセール品でおつまみ欲を満たしてしまう僕にとっては憧れの存在だ。
価格で見るとコンビニで売っているジャーキーのおよそ1.5倍程度。なんてちょうどいい贅沢なんだ。
僕にとってのまごうことなきご褒美にあたるビーフジャーキー、それがなとりの一度は食べていただきたいビーフジャーキー。
Amazonだとなぜかセット売りしかなったので、それがなんと5袋もある。正直困惑している。
なとり 一度は食べていただきたい 熟成ビーフジャーキー 40g×5袋(AMAZON)
100日分とかビーフジャーキーをもらった犬たちもこんな気持ちだったのかもしれない。
もうちょっと幸せは小出しにしてきてほしいもののようだ。
とりあえず味わってみよう。
実は、これまでビーフジャーキーをちゃんと食べたことないのだ。ビーフジャーキーのファーストテイクである。
袋をあける。この1つに3袋入ってるのね。
内袋を開ける。フワッと肉の香りが顔にあたって思わず心が躍ってしまう。
いよいよ実食。
パクッと。
(もぐもぐ)
(あーー、、うーーん……)
「固いっすね」
想像以上に固かった。
噛めば噛むほど肉の旨味が口に広がるが、するめいかと違って完全に柔らかくなることなく、そのまま飲み込むしかないのか。
正直これを山のようにもらっても…‥「あごしんどくなりそう」のほうが感想としては強い。
犬たちはこれを本当にご褒美として受け取ってくれるだろうか。チュールの方がうれしいってことない?
あ、でもちょっと待ってほしい。
ニュースで見てきた犬たちを僕では決定的な違いがある。
俺は特に人助けをしていない。
ご褒美として味わうなら、その前に理由が必要だ。
先にご褒美だけをもらってしまって、我慢できなかった子どものようで恥ずかしい。
きっと、人の役に立つことをしたらご褒美の味わいも変わるに違いない。
そうだ、ボランティアに行こう。
VS 高円寺
朝の高円寺にやってきた。
ネットで調べたら、週に1度ゴミ拾いボランティアをしている団体があるということで、日曜の10時半に駅前に集合した。
今回お邪魔させていただいた団体はグリーンバードというボランティア団体で、全国各地でこういった活動をしているらしい。
greenbird(グリーンバード) – ゴミ拾いボランティアのNPO
事前に申し込みは必要だが、手ぶらで訪れてもスタッフの人からゴミ袋や軍手、トングを借りることができる。
知り合いがいない場所に初見で行くことにやや億劫を感じたが、それでもご褒美のためである。真剣にゴミを拾っていこう。
高円寺は中央・総武線が止まり、新宿ともアクセスがいい。
駅近辺には飲食店が多く、純情商店街に入ると飲み屋が立ち並んでいる活気のある街だ。
その活気の残滓とも言えるゴミを粛々と拾って始まる。
この日は約10人くらいのメンバーが集まっており、長く参加しているご高齢やファミリー、大学生など参加層は様々だ。
大きく北口チーム、南口チームと分かれてゴミを拾っていく。僕は北口チームに所属となった。
僕自身も高円寺にはよく来るのだが、こんなに地面に集中したことはない。
ゴミ拾いあるあるだろうが、こうやって目を凝らすと気になってなかったゴミの数々が突然自身を主張してきて、この世界はこんなに汚れていたのか!と思い、それを俺が全部片付けてやるぜ!と興奮してしまう。
高円寺のゴミはとにかくタバコが多かった。あとは酒の缶ゴミである。繁華街らしい。
誰かに強制的にやらされているわけではないので、個人的にはゴミが落ちていれば落ちているほど役に立っている実感が湧き、うれしい。
事件を祈っている警官のような、ちぐはぐな気持ちを抱えたまま、およそ1時間程度、ゴミ拾いを完遂した。
この日だけでもゴミ袋2〜3個のゴミが集まった。高円寺は毎週ゴミ拾いをやっているのにだ。
お手柄犬のニュースでも思ったが、想像以上に見えない誰かの活躍で世界は整っているのだと思わされる。
そしても今回は僕もその一端を担ったのだ。誇らしいぜ。
君は、ゴミ拾いあとのビーフジャーキーを食べたことがあるか
さて、ついに待ちに待ったご褒美である。
1時間ほどゴミ拾いをして、再び高円寺駅前に戻ってきたので、せっかくだからこの場でもらうことにした。
ちょうどお昼時に差し掛かって空腹でもある。状況は完全に整った。
いざ実食!
(もぐもぐ)
(もぐもぐ……あー…うーんこれは……)
「しょっぱいっすね」
しょっぱかった。
ゴミ拾いで少しだけ汗をかいたので、喉が渇いていたのだ。タイミングを急ぎすぎた。
ご褒美をもらっても、その時に1番ほしいものかはわからない。
そして高級だからといって誰でも喜ぶわけでもない。
当たり前のことだが、体験すると言葉に熱がこもる。
その後、ちょうど日曜の昼で商店街の飲み屋が開きはじめたので、一杯飲むことにした。
ちょっとおしゃれにクラフトビールのお店である。
(ぐびぐび)
(ぷはーっ)
めっっっっっっっっっっちゃくちゃうまい。
ゴミ拾いで汗をかき、ビーフジャーキーで口が仕上がっていたので、完全にビールでフィットした。
これだ!!俺のご褒美はビールだったんだ!!!!
人には人のご褒美を
お手柄犬へのリスペクトが強まりすぎて、ビーフジャーキーにこだわりすぎていたのかもしれない。
犬には犬の喜ぶご褒美があればいいし、人には人が喜ぶものがあるのだ。
ご褒美はあくまで副賞なのであって、そもそも人の役に立つことが自体が尊いことだし、副賞以外にもたくさんこ名誉が表現されている。
その上で頑張りの報酬がもらえるなら、なんだってうれしいのだ。たぶん。褒められて嫌な人(生き物)はいない。
頑張っている人にはご褒美を、わたしくし庭氏は、これからもそんな主張を声高に叫んで参ります。
それにしてもあの時のビールはうまかった。いやぁよかったよかった。