新宿で1番静かな場所は、発車直前の小田急電車かも

 

生まれ育った町が小田急沿線にあるので、たまに新宿から小田急線に乗る機会がある。


今年も年末年始の機会に久しぶりに快速急行藤沢行きに乗ったのだが、乗った瞬間にあることに気づいた。

 

(やけに静かだ……)

振り返っても怪訝な顔をしている

入った瞬間から雑音が少ないなと思っていたのだが、扉がしまってから電車が動き出す瞬間、物音が少しもなくなって無音になる。

突如訪れた試験中のような静寂に緊張が走り、息を呑んでしまう。

その後2〜3秒でプシューと音を立て電車が動き出してホッとした。
静かには緊張が伴う、そんな新鮮な驚きを帰省の電車で思うのだった。

 

音を可視化してみる

 

帰宅してからしばらくはあの驚きを頭の片隅に置いていたが、あまりにも現実的ではないので気のせいだったのではないかと思うようになった。

いくらなんでもいつだって騒がしい記憶しかない新宿で、あそこまでの静けさがあるわけがない。
だったら確かめてみよう。

 

騒音計の登場である(アマゾンで5000円くらいだった)。

 

この騒音計、電源をONにすると瞬間で計測が始まり、音の大きさの単位「デシベル」で結果が表示される。
ちなみに一般的な音量をデシベルで表すと、だいたいこんな感じらしい。 

 

ジェットエンジン(飛行機)の近く:120db
カラオケ(店内中央):90db
セミの鳴き声(2m):70db
乗用車の車内:60db
ささやき声:30db
出典:騒音値の基準と目安 | 騒音調査・測定・解析のソーチョー

 

この騒音計は計測地点での Maximum(最大)・Minimum(最小) の音量を測れるので、その場での1番小さな音も拾うことができる。

誰もいないのに少し音がしている現状が怖い

これを使って小田急線快速の静寂を確かめにいこう。

 

時刻はあのときと同じ休日の10時台。快速急行藤沢行きに乗ることができた。

小田原行きと比べると人の数も少ない。静かなのはその辺りが影響しているのだろうか。

 

手元に騒音計を用意して乗車。騒音計はリアルタイムで音の状況を可視化するので、どんどんと変わる様子が楽しめる。

乗車時はドアも開いており、周囲の音を多く拾うので大体50〜60db程度だ。
騒音計と撮影用にカメラを抱えているのがやたら目を引く(気がする)ので、運転席の近くに行くことにした。

 

視界が開けて気持ちがいい。運転席と細かく変動する数字を交互に見ていると、まるで電車でGO!をやっているような全能を感じる。まだGOはしてないが。

 

そんなことを考えていると発車のベルがなり、ドアが閉じた。
次第に喧騒が遠ざかっていき、車内には静けさが訪れる。

 

ここだ。ここで手元の騒音計を注視しなくては。

47.7db。一般的な音量が60dbだとするとだいぶ静かな方ではないだろうか。
せっかくなので1番小さい音に絞って計測してみよう。

 

なんと、34.8db。

ささやき声程度の音は拾われているようだが、新宿の駅ど真ん中に静けさが存在していることを証明できたのではないだろうか。

 

なんだか自分だけ確かな事実をこっそり知っているようで嬉しい。

小田急の快速発車前の静かな車内の中、騒音計を見ながらニヤニヤしてしまった。これなんだろう音フェチ?いや違うな、デシベルフェチか。単位に萌えつつある。

 

その後電車は静かに加速が始まり、それに伴ってガタンゴトンと60db〜80dbを響かせながら、代々木上原に向かっていった。

 

 

音が見える体験

 

騒音計に当てることで、自分が驚きが実証できたことがうれしい。仮説の検証ってこんなに愉快なのか。理系になればよかった。
もっと騒音計を使って、身の回りの音を視覚的に感じたい。

 

手始めに山手線のホームに寄ったら、111dbも音がしていた。

毎朝のように通勤で使うけれども、かなり大きな音がしているのだなと驚く。

 

そういえば、普段はノイズキャンセリングイヤホンをしているので、こういったノイズはキャンセルしている状態で日常を過ごしているのだ。

100dbもの大きな音を平気な顔で通り過ぎている自分が怖くなってきた。

 

耳の数よりも圧倒的にイヤホンの方が多い。なぜだ。

 

待てよ……騒音計を使えば、自分が聞き逃しているノイズの大きさを知ることできるってことか。

 

これまでは静かさを探していたが、逆にノイズキャンセリングイヤホンで聞き逃しているうるさい音を探しにいって、「ちきしょう、この音もキャンセリングされてたのかっ」となりたい。

 

 

ファミレスはセミとカラオケの中間

 

いつも、文章を書く際にファミレスをつかう。

場所は家の近所だったりり撮影した場所の近くだったり様々だが、猫のロボットに会いたいのでファミレスならガストを選ぶことが多い。

 

今回もさっき撮った写真を整理しようと、新宿の花園神社近くにあるガストにやってきた。

ここは新宿三丁目の近くにあって便利なのだが、ファミリーがいるようなガストよりもはるかに混雑しており、お昼時を外しても休日なら30分は普通に待つことがある。

この日もそれくらい待ってから入店した。

 

さっそく席に座ってタブレットスタンドに騒音計を立てかけて音を採ってみる。


人が通ったり、会計が始まったり、猫のロボットが通ると音が大きくなったりしたが、大体は87db程度だ。

 

さっきの参考サイトの値でみると、セミの鳴き声とカラオケボックスの中間くらいだろうか。
ここも普段はノイズキャンセリングしているので気づいていなかったが、イヤホンを外してみるとだいぶ騒々しい。

 

驚きをもって店内を見渡すと大体の1人客はイヤホンをしており、一方で複数人の団体は談笑が盛り上がっていて喧騒なんて気になっていない。

人は自然とその場でストレスを感じないように適応するのだろう。
人類はこうやって成長してきたに違いない。

  

続いて井の頭公園にやってきた。
休日は人も多いが自然も豊かでベンチも多く、散歩でよく通る。

駅のスピーカーがハートマークだった。いいね。


この時は桜が咲く直前の週末だったので、人も多い。普段だったら間違いなくイヤホンをしながらベンチでアヒルボートを見ているだろう。

この画角だと本物のアヒルみたいにみえる

 

しかし今日は使命感を持って騒音計に集中だ。

せっかくなので、人混みに近い場所で測ろうとアヒルボート乗り場の近くまでやってきた。騒音計を起動してみる。

53.9db。これまでいた場所と比べるとかなり静かだと感じる。

 

これまでとは異なり周囲が壁に覆われていないので音がこもらないのだろうか。これからは公園ではノイズキャンセリングしなくてよさそうだ。

外出時は必ずといっていいほどイヤホンをしてしまっているが、耳がもったいないので今後屋外では積極的にイヤホンを外してみたくなった。

 

 

うるささとしずけさを体感しよう

 

公園の帰り道に吉祥寺に寄ってみた。


せっかく騒音計を持っているので、1番デカい音と小さい音を記録したいと思い、まずはパチンコ屋に向かう。


実は、初めてのパチンコ屋入店である。

音を測りに来ました

 

 

たまに店前を通り過ぎたときに、こもれでる爆音のカケラを感じ、あの環境でもギャンブルに集中してしまう魅力が怖かった。近づいたことないので店の中の構造もよくわかっていない。

 

恐る恐る店内に入ってみると、四方八方から豪快な金属音とけたたましい電子音が鳴っている。

エスカレーターがやけに近未来的でかっこいい

イメージではパチンコ玉がぶつかってガチャガチャいっているだけだと思っていたのだが、エフェクトらしき機械音のほうがはっきりと耳に届く。

パチンコ屋って複雑な音の重ね合わせでうるさいのか。意外だ。

 

店内の通路も狭かったので誰にも迷惑をかけないよう、端っこでこっそりと騒音計を点灯する。

83.3db。
え、パチンコ屋よりも山手線のホームの方がうるさいぞ。山手線すご!

 

MAXを勝手にパチンコ屋だと思い込んでいたので、普段からより大きな音を浴びていたことになる。勝手にうるさい場所だと決めつけていたことに申し訳なくなる。

パチンコ屋って結構しずかなんだ、と騒音計がなくては思わない感想を抱いた。

 

その後店内の数カ所で計測もしてみたが、あまり数値の変動はなかった。
ちなみにパチンコ台よりもスロット台があるフロアの方が静か(大体db)だったので、音が怖い人はスロットから試しましょう。

 

そういえば会社や駅のフロアではお菓子などが入っているこのタイプの自販機にタバコがはいっていて、パチンコ屋の需要を目の当たりにして感動した。

大人になっても初めての場所には知らない世界があって、まだまだ俺はワクワクできるんだ…!と思う。

 

山手線よりは静かだとはいえ、なかなかの音を浴びたのでしずかなところに行きたくなったので、最後に図書館で音を測ってみよう。



紙をめくる音ひとつでも敏感になってしまうほど静かな場所だが、騒音計で測るといかほどか。 

31db。ささやきごえ程度の音量だ。

いくら静かだとはいえ、空調や人の足音などは響いている。人間の耳ではあまり大小を感じないが、こんなに静かな場所でもそれなりに音はするのだ。

 

そう考えるとMINで同じ30db程度の小田急線はやっぱりかなり静かな部類に入る。少なくともガストや公園よりははるかに静かで、図書館と同じくらいの音量だ。

もしかしたら新宿駅近辺で1番静かなのは発車直前の小田急なのかもしれない。

 

 

見えないものを見えるようにすると比較できてたのしい

 

騒音計を通して感じたことは、数字ってわかりやすい!だった。

やはり目に見えないものは見えないなりに把握できていないんだな、と、見えないものが比較できる形になることにありがたい気持ちになる。

 

騒音計を入手してから、聞き逃している音が意外と大きかったり、逆にうるさいと思っていた場所がそこまでではなかったり、自分が生活する様々なものの違った側面が見えるようになった。

 

あと、騒音計をもっていくつかの音を可視化していると、「ここは大体〇〇dbだな」と思いながら生活ができるのもたのしい。
音に注目(変な日本語だ)したいのであきらかにイヤホンをする機会が減ったのだが、それでも退屈はしないし、外出の新しい楽しみかたを知ることができたのは今後の余生にもたらす影響が大きい。

 

最近はスマートフォンで手軽にデジベルを測るアプリもあるので、みなさんも身近な音を拾って、ぜひ戦わせてみてください。
あと新宿駅近辺で小田急線発車直前よりも静かな場所があったら教えてください。バトルしましょう。

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