5/5_さよなら絶望人生

今日は朝からコミティア行ったり、スペアザのライブに行ったり方々忙しくしていたのだが、それでも充実感はなかった。
おそらく1日に起こる出来事に期待をしすぎているのだと思う。
見た景色や遭遇したイベントを鑑みれば、普通にGWを満喫していることになるのだろう。

しかし、コミティアでは参加の時間が遅かったために目当ての半分しか回ることができなかったし、スペアザのライブでは俺の席の周りにキッズスペースが生まれてしまい、終始ライブに集中できなかった。
そう、参加しているイベントはとても立派で愉快なものなのに俺の半径5mだけ、妙に違和感がある。
俺が会場にあっていないのか、生活からずれているのか、慣れないことはすべきではないという警告なのか。
兎にも角にも、パッとしない1日だったのである。

とにかくスペアザのライブの話を聞いてくれ。
今日はスペアザ(specialothers)ライブが上野恩賜公園、野外ステージにて行われていた。天気も良く、風も適度に吹いている絶好の野外ライブ日和である。
俺は30分前くらいに400番台で入場をし、なぜか誰も座っていないOブロックに着席して開始を待っていた。


5分くらいしてからだろうか、人が少ない原因に気づく。この席は日当たりが良すぎるのだ。西日が全身に差し込んでいて異常に暑い。
冬から着ているシャツの袖をまくり、周囲を見渡して他の席に行こうか考える。このライブは席が自由なのでどこに座ってもいいらしい。よくみると前列も結構空きがある。
しかし俺は野音のプロ、大体野音でやるライブはセットリスト中盤で日が傾きステージ中央の方が日差しが強くなるのを知っている。
つまり、ここで席を移るのは愚策。今はつらくともライブが始まればすぐに気にならなくなるはずと席はそのまま、俺は日差しに耐える選択をした。

なんと撮影可!

そして定刻通りライブが始まり、specialothersの素晴らしい音楽を堪能していると、予想通り日は傾き、俺の席は日陰となっていく。
「あ〜この夜が染みていく感じが野音ライブの醍醐味……」など悦に浸りながら、ここからが俺のライブスタートだ!と思っていたら事態は急変する。俺の席斜め前に家族連れが席を移動してきたのである。

お父さんに連れられてきたであろう3歳くらいの女の子は完全にインストバンドのライブに飽きているのが側から見ていても良くわかる。グデングデンに伸びてしまっているからだ。
恐らく座っていた席でぐずってしまい、周囲の目もあって人のいないこのブロックに移動してきたのだろう。

こればっかりはしょうがない、むしろ小さなうちからインストバンドのライブに慣れて親しんでいるなんて天才の片鱗ものだ。俺だって20歳くらいからこの手のライブを楽しめるようになったのだから。
しかしそんな冷静なことを考えていられたのも、彼らがきて10分くらいだった。
さっきまで伸び切っていた女の子が、妙に視界にちらつくなと思っていると、会場の隅を走り回っていることに気づく。
ギョッとしてそちらをみると、なぜか女の子がもう1人増えていた。
早く走りすぎて分身でもしたのかと思ったらそうではない。俺の後方にもう1家族増えているのだ。
どうやら先にきた家族と同様の状態だった彼らもまた、行き場所を求めてここに辿り着いたらしい。

意気投合した彼女たちはインストバンドを小粋なBGM代わりに、野音の端っこで公園気分を味わっている。
確かに野音&GW &スペアザの雰囲気は最高だ。あまりに最高で全体的にかなり緩い雰囲気がある。
音楽を聴くというよりも、音を楽しむに近いライブだ。全員ヒッピー気分で「怒りとかナンセンスっしょー」みたいな空気が漂っている。
さらに言えば、俺はこういったぐずってしまう子どもにも大変寛容な性格を持っている。両親の苦労も推察して余りあるため、基本的に不平不満は抱かない。

しかし、しかし、これはどうだろうか。
もちろん、彼女たちは悪くない。飽きてしまうのにも納得がいく。でもなぜ両親は何もしない?
端っこだから?誰にも迷惑をかけていない(特にうるさくはないのだ、ただ視界の端にチラチラ入るだけ)から?
いやいやいや、俺もいるから!同じブロックにずっと俺、いるから!
ここまで読まれた方はきっと「じゃあ席移ればいいじゃん」と思うかもしれない。そう、恐らくそうすべきだったのだ。
でも俺は!この席で快適にライブを満喫するためにあの地獄の西日を耐えてここにいることを忘れてはならない。
少なくとも彼らよりもここにいる権利を持っているはずなのだ。

そんな内面での葛藤が行われているとは露知らず、端でかけっこをしている彼女たちはそのまま仲良くなり続ける。そして両親は久しぶりのライブを楽しんでいる。
最悪だったのは、アンコール曲の大サビ前。1番ライブのピークが来る時に、女の子の1人が俺のそばまで転がってきて、「カコッ」と舌を鳴らした。
その異音に思わず女の子を注視してしまった俺は、大サビの入りを見逃してこの日の全てを台無しにされた気分になったのである。

帰路、呆然とモヤモヤを解消しきれないままただただ足を動かしていた。
再度いうが、おかしいのは彼女たちではない。
とはいえ、俺には両親を責める権利はない。彼らも苦心していて、あの場ではああする他なかったのだから。
本来は俺が席を移れば良いだけの話で、誰も損な役回りになることはなかったはずなのだ。
社会全体で子どもを、子育てを尊重しようという雰囲気を感じている独身人間としては、このやり場のないモヤモヤを抱えたまま寝床に入る他ない。

帰ってから気づいたが、今日は子どもの日だったらしい。
ならばしょうがない。すべてを水に流そう。子どももいない俺がそもそも休めたのは、彼女たちのおかげだと、そうぐっと腹に力を込めて今日という日を忘れることにした。俺は今泣いているがそれは今日のこととは関係のない話だ。

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