2/23_ヤサイキライタンタン

昼に坦々麺を食べた。
注文してから気づいたが、おそらく俺は坦々麺を食べたことがない。
空腹で店に入って、とにかく最初に目についたものを頼んだのだが、考えが浅かった。坦々麺って何が入っているんだ?

俺は野菜が食べれない。
その好き嫌いは筋金入りで小学生時代から今日に至るまで、絶対に自分の意志で食べないと決めたものはどんな状況でも断ってきた。
新卒の会社での懇親会で社長が目の前に座っていても俺はサラダに手をつけなかったし、その時に「君はどうしてこれ(サラダ)を残しているんだい?」と社長に聞かれた時も「一身上の都合です」とキッパリ言い切って、社長にそれ以上有無を言わせなかった程である。

そんな俺に突然訪れたピンチ、これから運ばれてくる食物の内容物がわからない。こんなに怖いものはない。
坦々麺、辛くて赤くて肉が入っている、ということしかなんとなくわからない。
そういえば前働いていた中華料理屋で限定的に扱っていた時は山ほどのもやしとコーンを入れていたな、と思い出してゾッとした。目の前にもやしとコーンがたっぷり乗った食べ物が突然現れて、それを食べなければならないという(しかもそれは確かに俺が頼んだもの)状況をイメージしてしまい鳥肌がたった。

戦々恐々としながら未だ見ぬ坦々麺を待っていると、ついに店員さんが大ぶりな丼を運んできた。
その中には胡麻ベースのスープにたっぷりのラー油、さらに炒められた挽肉、そしてネギとほうれん草が乗っていた。
それをみてホッとする。「思ったほど、終わっていない」。
どちらにしても結局野菜をのけて食べるしかないのだから(そもそも野菜を食べるという選択肢はない)、その量が少なく、摘みやすいネギとほうれん草程度であれば問題ない。
俺はこう見えて20年以上野菜嫌いをやっているのだ。その辺の初心者と同じと思ってもらっては困る。その摘出技術たるや、名医の腫瘍摘出の精度に勝るとも劣らない。強い気持ちで野菜を取り除き、無事坦々麺を完食した。

完食できた余韻に浸りながら、そのまま店を出ようとすると後ろから慌てた様子の店員さんに呼び止められ「あのお客さん!お会計!」と言われた。
達成感のあまり、会計を忘れていた。ただただひたすらに害悪である。

そして今現在、坦々麺の辛さにやられてお腹を下している。
そういえば坦々麺の麺も赤かった。あれもしかして唐辛子練り込んだりしているのでは?
祝日の終わりにも関わらず全くめでたくない。お腹痛い。誰か俺に優しくしてくれ。

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