新宿ウォーキングデッド

 新宿、それは魔都。
世界一の乗降者数を誇り、駅に一度入り込めば出ることはできない。
駅構内から出ることができなくなった人々は屍人と化し延々に駅をさまようことになる。屍人が多く出るのは金曜〜土曜にかけて、平均毎時400人がゾンビとなる。新宿の空気が悪いのは彼らの影響だ。

 そんな状態が露見しているも関わらず、人はなぜ新宿へ赴くのか。
その謎を解明するために、我々一行は新宿に向かった。

 新宿のいいところ、それは定期券内のところ。
そして手頃に買い物ができるのが新宿のいいところ、、、と普段ならばルミネにマルイ背伸びして伊勢丹などとお買い物エンドを迎える日曜日を過ごしてしまうが、今日はそうはいかない。迫り来るゾンビーズに対抗するべく、まずは歴戦の戦士御用達のここで腹ごしらえとなった。

※デニーズ新宿中央公園店

というか我々の御用達デニーズである。
確かにフードを制するものはデートを制すと平野紗季子氏もいっていた。新宿にはたくさんの美味しいフード屋もあるだろう。しかしそもそもデニーズはフードを制している以上、これに敵う選択肢を我々も持ち合わせていない。

※デニーズ豪遊ルートのお写真
<<<<これが俺たちのトゥルーエンド>>>>

 いつもの昼食を済ませた我々が次に赴いたのはすぐ横、東京都庁。
ここにはいつでも誰でも入れる展望台が解放されている。敵を探るべく上空から戦況を把握、、、ではなく単にデニーズの横にあり腹ごしらえにちょうど良かったからだ。
展望台へ出る(展望台の写真)。
「昼に来ても何も面白くない」「電車から見る景色とさして変わらん」「せめて晴れてて欲しかった」彼女からスマッシュ攻撃が続く。
こちらはそれをしかと受け止め、「これも都民の血税によって見ることができる景色だよ」と返す。すると彼女は口角をわずかに右にあげ、「人がゴミのようだな」と放ち展望台を後にした。

 続いて曇天の新宿御苑へ向かう。雨が降っていないだけマシだろう。
クリーンにカットされた芝生の上で多くのファミリーが各々の休日を過ごしている。我々も例に倣い大きめ5人用のレジャーシートを広げ、横になる。
本当は持ち込み禁止だが、こっそり懐に隠すことで目ざといガードマンを突破し、今ここに顕現するアルコール飲料、ストロングゼロ!(ストゼロの写真)
これが新宿の公式飲料ということで我々もそれに倣ってみた(御苑に持ち込みはダメなのでこれは違法です)。
たまには質の悪い安酒も悪くない。新宿だし。
「この堕落を許してくれる感じが新宿にはあるね」と彼女がいう。
確かに、新宿は多様な価値を「放置」という形で許容してくれる感じがある。
新宿が人間を許してくれているように、我々も新宿を許さねばならないのかもしれない。
それから1時間弱ゴロゴロをしながら管を巻く。太陽が傾き、少し肌寒くなってきたタイミングで御苑の閉園時間となった。いいね行政サービスっぽいね、などと変わらず管を巻きながら御苑を後にした。

 新宿駅に向かって歩きながら、たどり着いたのはここ「新宿末広亭」。(末廣亭の写真)

今日のメインであり、僕のオススメ新宿スポット第一位。学生時代から暇さえあればここに向かい、彼女とのデートでもすでに何度か行っている。
今月の上席ではかの悪名名高い神田松之丞が高座に上がるとのことで今日のメインにここを据えた。
入り口で夜席のチケットを買う。中は日曜ということもあってか満員。
さすが日本一チケットが取れない講談師が出る七月上席。我々は入り口右手の上がりに入ってぽてっと座った。
僕の視界右手には彼女の後頭部、それ越しの高座。都庁からみる風景なんかより全然いいね!本当!
彼女は大きく口を開け笑っている。好きでしかない。松之丞の怪談を聴き終え、その後なんだかんだ2時間ほど寄席を観賞し末廣亭を出る。
最後までいても良かったが、さっと寄席を後にする感じも江戸を着こなしている感じがしていいでしょ、と適当なことをいう。

 ストゼロもすっかり抜けて今宵のご飯処へ。昼はデニーズで日常をしてしまったので、夜は少し普段と毛色が違う場所へ赴いてみた。

(ざうおの写真)

ご覧の通りの様相。魚が釣れて、船があって、外人とカップルが多い。
非日常を求めている人しかいない、それがざうお。
しかしざうおの難しいところは魚を釣りに行くタイミング。
頼めば出てくる酒はうまいし料理も良い。ぶっちゃけ釣らないといけない魚なんかどうでもいい。
付き合いたてらしきカップルがお互いの距離感を測りながら魚を釣っているのをみている方がよっぽどつまみになるぜげへへ、、、。
「でもまあ、初デートでざうおはな〜」と彼女がいう。
曰く「魚臭くなるし」「水飛ぶし」「騒がしくて会話できないよ」とのこと。ふむふむ勉強になる…
いやあれ?え、ここダメだったの?言外でそう伝えたいの…?と不安な面持ちになる僕。
が目の前のブリを貪る彼女をみて(いや…そうでもないか…?と持ち直す)
ざうおはそういうところ。(思考放棄)

 ざうおを後にする。お腹パンパン、お腹ペコペコヘリコプターの対義状態!とほろ酔いで歩く我々。

すると新宿駅へ登る坂の途中で我々夕闇通り探検隊は目を疑う!!!!屋台のラーメンが普通の交差点に店を出していた!!!(ここでお写真)
「「えーーーーーーーー!」」心の宮川大輔×2が首を小刻みにふりながらリアクションをとる。(宮川大輔のgif)
いやいやいや、これはやばい、何がやばいってお腹いっぱいなのにもう座って正油ラーメン頼んでいるもの。
すごい、すごいなあ〜これが東京かあ〜…彼女と1つのラーメンを二人で分けて食べる。
これあれだな、万が一別れたりしたら歌詞になりそうなエピソードだな、と思うが口には出さない。なんか怖いし。
すると「これなんかMOROHAとかが失恋ソングで歌いそうな出来事だね!」と彼女がいう。普通に言ったな。まあいいけど、確かにMOROHAっぽいし。。。ラーメンは無事完食できた。

 もう無理なにも食べれない一週間は食べ物入らない光合成で生きる、とかなんとか言っていると間も無く駅にたどり着いた。

時間はもう23時。駅を見上げる。
明日の9時(すでに10時間を切っている)には死んだ顔をしてこの中にいるのだろう。それでもいいと思うような夜を過ごすことができたからまあよしとしよう。この1日のために5人は屍人になろう。僕らは屍人から人間を行ったり来たりして生きている。人間のうちに幸せを噛み締めよう。

新宿は魔都だが、魔都にしかない魅力をしっかりと直視できた休日でしたとさ。煮浸し煮浸し。

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