メゾンド丸の内トーキョー

 毎週末のように出かけていた夏が終わり、秋が始まっている。
肌寒さと引き換えに情緒が漂う秋の空の下、今週もまた出かけることにした。
「場所は知っているけど、行ったことがない場所」というオーダーを洗面台の方から事前にいただいているので、それに則って提案をする。
無事提案が可決され、我々が本日向かう先は東京、丸ノ内となった。

 東京に住んでいる。丸ノ内線も使っている。が、案外行くことはないのが、東京駅丸ノ内。その理由は中央線を降りて東京駅南口を出ればおのずとわかる。
見渡す限りのビルビルビル。大きなビルは景観として荘厳で楽しいが、その実態がわからない。
 大仰な入り口のそれはパンピーが入っていいものなのか、割と怒られるものなのか、その判断が難しい。結局として東京を避けて皇居方面へ行ってしまうのが我々の常だ。
今日こそその殻をぶち割って都民のシティボーイ&ガールとして胸を張りたい。

*(乱立するビルの写真)

 強い気持ちで我々が初めに取り組んだのはいつも恒例のショッピング。丸の内近郊にはとにかくショッピングビルが乱立している。
丸ビル新丸ビルKITTEにオアゾ。どれも見た目はオフィスビルディングのようだが、中に入ればあら不思議、洗練されたルミネ・ららぽーとのようなものだ。
東京駅を中心としてぐるりとこれらのショッピング施設が乱立しているのが東京駅丸の内で、正直それで完結しているのが東京駅丸の内だ。
熱い気持ちを落ち着かせてKITTEに入る。

 KITTEは5階建ての建物で、そのうち殆どが雑貨屋(セレクトショップ)で構成されている。
「ついつい無駄遣いをしてしまういい大人選手権」日本代表の僕としてはどうしても財布の紐がゆるゆるになってしまう弱点的なオソロシアスポットなのだ。
ちなみに今回の購買では「ケロヨン桶」「白檀の香りのお線香」「業務用スポンジ」シメて一万円を購入した。THE SHOP、恐しい店である……。

*(THE SHOPの看板の写真)

 さてそんな浪費活動を無事終えて一階に降りると、耳馴染みはあるけど滅多にお目にかかれない三文字が目入った。
「千疋屋」
何と神々しいことか、たった三文字の響きだけで庶民には手が届かない高級感と甘美なる贅沢な「何か」が用意されている空間であることがわかる。
そう、KITTEには超高級フルーツパーラー「千疋屋」のカフェがある。
当然入った。そして当然コレである。

*(フルーツパフェのの写真の数々)

輝かしい果物、それを食す、これが人間の業である。
その業を行う前に欠かせない「礼拝の儀」(いただきます)を済ませてからあとはもう一心不乱に食す。いつもは愛らしい彼女もこの時ばかりは獣と化していた。

*(人型の何かがパフェを貪る写真)

 身も心もテカテカの我々が次に向かったビルは丸善丸の内本店だ。
あの実は元祖ハヤシライス発祥をしたことでお馴染み丸善ジュンク堂の本店は丸の内のオアゾにある。
ちなみにこの書店、僕は仕事でお世話になっていたこともあるので、マスクを着用しての来店。
これが世間で有名なお忍び丸善スタイルである。彼女はそんな僕の健気な努力を無視するかのようにマスクを剥ぎ取ってくるので、比較的殺伐とした本屋デートとなった。
四面楚歌な状態の中二人揃って紙袋がパンパンになるほどの書籍を購入した。彼女チョイスの『それがやれる人の生きかた』という本を買ってはいるが、恐らく読まないだろう。

*(重たい紙袋と真っ赤になった手のひらの写真)

 その後、オアゾをプラプラし、買い物も飽きたので外へ出る。ふと顔をあげると暗がりがかかった丸の内をライトアップされた東京駅が照らす。
さすが首都東京を名乗る駅だけはある。その立派な面持ちに二人「大したもんだ」と賞賛の拍手を送った。

*(ライトアップされた駅の写真)

 しばらく植え込みに座って東京駅を鑑賞しながらの談笑に花がさく。
延々に続きそうなその時間の終わりを告げたのはどこからともなく聞こえてきた腹の虫の悲鳴だった。
甘美なるパフェも、我々にかかれば消化も一瞬。そそくさと東京駅鑑賞を離れ本日のディナー探しへ。そしてたどり着くのは、本日手をつけていないビルディング、そう丸ビル。

 丸ノ内を代表するハイソな商業ビルは、正直紳士淑女に未だ至れない未熟な我々には少しお早いが、逆に丸ビルディナーを済ませたらもうそれは紳士淑女なのでは?という天才的ひらめきから勢い込んで乗り込む。
妙に多い曲がり角に苦しみながらも、何とかレストラン街へたどり着き、さて行くぞとここへ入った。

(※Marunouchi Cafe × WIRED CAFÉの写真)

結局のWIRED CAFÉ!無念!
我々の貧相なお財布では、丸ビルのハイソレストランには太刀打ちができなかったのである……。
でも美味しかった、ありがとうWIRED CAFÉ、ずっと好きだよWIRED CAFÉ。

 と、そんなこんなでちゃんと丸一日を丸ノ内で過ごすことに成功した。だが、どうしても背伸びした感が拭えない。
特にディナーでは丸ノ内に完敗だった(主にお財布が)。
次こそ丸の内に乾杯、と言えるようにお仕事頑張るぞい!と強く胸に刻んで、帰りがけのニューデイズでストロングゼロロング缶を買って帰宅。

 東京都に住んでいても、東京には住んでいない。丸の内を住んでいるように回遊できてこそ、真の都民として税を収められる。
高めの目標を設定して、今日のところはすごすご退散、そんなお休み。

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